あなたは歯茎の健康について考えたことがありますか? 歯ブラシで磨いているときに出血しても、歯が白くなることばかり考えて、ゴシゴシと磨いてはいませんか? 結構、歯については気を使っていても、歯茎にまで気を使っている人は意外に多くありません。
 でも、想像してみてください。笑顔の中に見える「ピンク色の引き締まった歯茎と白い歯」を。まさに清潔感に溢れて健康的で、周囲の人には必ず好印象を与えるはず。
 歯だけキレイでも、それを支える土台である歯茎も健康的でなければ、マイナスとなってしまいます。「白い歯」と「ピンク色の歯茎」が揃ってこそ、口元の美しさが際立つのです。
 しかし、健康な歯茎でも残念ながら黒ずんでいる場合もあります。このケースの多くは、メラニン色素の沈着が原因です。歯槽膿漏などの歯周病でもないのに、歯茎が気になって人前では大きな口を開けられないという人が結構多いのです。
 しかし、歯茎が健康かどうかの自己判断は禁物です。まずは、歯科医師に相談してみてはいかがでしょう。
 我々歯科医は、まずは、歯茎が黒ずんでいる原因を探ります。歯茎の変色の原因を的確に診断し、その原因に対して効果のある治療を施すことが重要となるからです。


 歯茎が黒ずんでいる症状とその要因は、大別すると次のようになります。
●全身的要因
 ごくまれにですが、全身疾患や症候群の一症状として表れることがあります。胃腸に多発性ポリープができる疾患、消化器系に障害を生じる疾患、中枢神経系の腫瘍を主症状とする疾患、再生不良性貧血症などでは、歯茎が黒ずんでくることがあります。
●局所的要因
 メラニン色素沈着により、生理的な状態として歯茎が黒っぽくなります。また、歯科治療時に詰めたり被せたりした歯科用金属のイオン沈着により歯茎の一部が黒くなることもあります。
 この局所的要因の中でも最も多いのが、メラニン色素沈着です。口腔粘膜の、とくに上下前歯部の歯肉にメラニン色素特有の褐色の色素沈着が表れます。健康な人でも、100人のうち5〜10人がこの状態であるとも言われています。
 メラニン色素とは、どういうものなのでしょう。皮膚が強い紫外線を浴びたときなど、やけどから皮膚を守るために自動的にメラニン色素を分泌させ、皮膚を黒く(いわゆる日焼け)して守ろうとします。同じように歯肉の細胞も、さまざまな刺激から歯肉を守ろうとして、メラニン色素を分泌するのです。いわば生体の防衛反応のひとつと言えるでしょう。その刺激としては色々とありますが、喫煙や過激なブラッシングなどが挙げられます。
 この沈着は、とくに増殖するわけでもないので、本人が気にしなければあえて除去する必要はないでしょう。


 とは言っても、やはり気になる場合は、メラニン色素沈着を除去します。それには、次のような方法があります。
@黒い歯肉を外科的に除去する。
A研磨剤などによって、歯肉を削合する。
Bフェノール・アルコール法によって、歯肉を一層除去する。
Cレーザーによって除去する。
などです。
 @Aの方法は、外科的な要素が強く、患者さんへの心身的負担が大きいと思われます。
 Bの手法は、現在も比較的多く行われています。フェノール・アルコール薬剤を塗布して、化学的に上皮を剥離させる方法です。
 最近では、レーザー治療の進歩によって、Cのレーザー治療で除去する医院も増えてきています。レーザー治療の優れた点としては、
●非観血的処置であり、生体への侵襲が少ない。
●治療経過が早い。
●術中にあまり疼痛を伴わない。
●治療回数が少ない
などが挙げられます。


 メラニン色素沈着は、前述したように歯周病や喫煙者の歯肉に多く見られることがあります。刺激から身を守る防衛反応ならば、同じ事を繰り返していると、再発の恐れがあります。正常な皮膚組織の場合、20〜25日のサイクルで新陳代謝を繰り返していますので、この期間を過ぎて再発しなければ、メラニン色素は除去できたと言えます。
 一方、再発した場合は、遺伝的な原因や、喫煙などの過剰な刺激の可能性も考慮しなければならないでしょう。
 金属イオンの沈着による歯肉の変色の場合、除去困難ではありますが、レーザーの繰り返し照射によって、効果が期待されます。
 このように、さまざまな治療法がありますが、まず治療する必要性があるのか、自分にあったものはどれか、歯科医と十二分に話し合って決定するとよいでしょう。


用語解説

◆全身的要因
全身的要因が考えられる場合は、口腔外科をはじめ、内科や皮膚科などの専門医の受診が必要。

◆フェノール・アルコール法
プラークコントロールされている炎症のない歯肉が絶対条件。術前には、歯垢や歯石を徹底的に除去し、歯肉の炎症を抑えておく。この健康な歯肉にフェノール・アルコール薬液を塗布する。所要時間は約20分程度で、麻酔は不要。3〜4日後には上皮がタンパク変性をを起こして自然にはがれる。5〜7日後には表皮が再生され、2週間後には内面の歯肉である真皮も再生される。


曽山幸一院長
1972年 九州歯科大学卒業
1972年 九州大学歯学部第一口腔外科
1985年 曽山歯科医院開業
●所属団体
日本審美歯科学会
日本医療管理学会九州支部
九州支部局副支部長
日本顎咬合学会認定医