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最近、審美に関する関心は高まっていて、キレイな歯や歯並びを希望する人が多くなってきています。確かに、ヘアやメイクをするように、歯もキレイにしたいと思うのは自然なこと。美を追究する気持ちの表れでしょう。
一方、薬などの影響で先天的に歯が黒い人や、事故などで歯が変色してしまった人たちは、われわれ医師が「こんなに白くしなくても」と思うぐらい白い歯に対する憧れはかなり強いものがあります。実際に白くなった歯を鏡で見て涙を流す人もいます。
しかし一般的な人たちは、審美と言っても人から見える歯を美しくしてもあまり意味がありません。噛み合わせを考えて、口腔内全体をバランスよく、しかも機能的に治療してこそ、本当の意味の審美治療と言えるのではないでしょうか。
そこで、噛み合わせについて考えてみましょう。
よく言われることですが、噛み合わせが悪いとさまざまな影響があります。正しい噛み合わせとは、上の歯と下の歯が、それぞれ対応するように噛み合って、接触しています。そのため、しっかりと食べ物を噛み砕くことができるのです。
よく噛むことで唾液の分泌を促進し、内臓での消化を助けます。また、唾液の口浄作用によって、口からの雑菌の進入を防いでもいます。さらに、脳の血液循環をよくしてくれる役割もあります。ところが、噛み合わせが悪いと、どうしても食べ物をよく噛まなくなります。また、柔らかい物を意識して食べるようにもなってしまうのです。
例えば口の中に被せ物が多い人の場合、本人が噛んでいる感覚が薄くなり、噛み合わせの悪い場所に負担がかかるようになります。今度はそれを避けて噛むようになります。これの繰り返しで、どんどんずれてしまうことがあります。ひどくなると、本来左右対称であるべき顔のバランスが崩れ、肩こりや腰痛、頭痛などを引き起こすこともあります。また、噛み合わせの力が弱いと、顎関節症にもなりやすい傾向があります。
運動選手などは、力を入れる瞬間に奥歯などを噛みしめます。この噛みしめによって、通常よりも強い力を瞬間的に発揮できることもわかっています。
しかし、噛み合わせの影響はなにも身体だけではありません。メンタルな部分に大きく影響してくるのです。
前歯の歯並びがよくなかったり、発音がうまくできず、人前で歯を見せることを極端に嫌って、無口になってしまう人。つい口元が気になって大きく笑えない人などなど。歯並びの悪さは、さまざまなコンプレックスを抱えこんでしまうことがあります。そして、内向的な性格になってしまうことがあります。
実際、人と会ったときの第一印象で、口元というのはかなり重要な要素のひとつとなります。会話の中などで、ふっとみせる笑顔が美しかったりすると、強く印象づけられます。その笑顔をキレイに魅せてくれるのが、口元なのです。
歯並びを治したことで、人前でも気にせず笑えるようになって「自信が持てた」という話も患者さんからよく聞くことがあります。今までコンプレックスにさえ思っていた口元を気にせずに会話ができる。周囲は、「積極的になった」とか「明るくなった」と感じるようです。そして、本人自身もそれが自信となっていくのでしょう。
症状や治療によっては、このような大きな変化はない場合もあります。しかし、自分自身が悩んでいたことが改善されれば、大きな自信となることは間違いないようです。
いずれにしても、「口は身体の入口」です。もっと自分自身の口を大切にしてあげてください。一人で悩んでいないで、気軽に歯科医に相談してみてください。

最後に、治療を受ける上でのアドバイスをひとつ。患者さんは、今まで述べてきたような大きな期待を持って来院されます。悩んでいらっしゃっただけに、多くの知識を頭の中に入れて来ます。しかし、間違った知識を信じ込んでいる場合もあるのです。
当院では、患者さんとの徹底したインフォームド・コンセントをし、十分に話し合った上で治療方針を決定します。私自身は、まず削らないようにして治すことを前提に治療法を考えます。きれいな歯並びイコールその人にとって機能的であるとは限らないからです。美しさと機能の両面を考えてこそ、美しく、正しい噛み合わせができると考えるからです。そして、状態をみながら、少しずつ治療を施していく必要があると思います。
しかし、患者さんは劇的な変化を求めてくることがあります。そこに医師と患者さんの意識のギャップが発生します。このギャップをじっくりと話しながら、いくつかの治療法を提示し、最善の治療法を探していくのです。
ですから、ひとつの考えに凝り固まらずに、歯科医の声にも耳を傾けながら、一緒に最善の治療法を探していくような気持ちを持っていただければと思います。
正確な診断と充分な話し合い。その上で、症状の改善が望まれる最低限の治療が、あなたにとっての最善の治療ではないでしょうか。
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