ここでは、「出っ歯」(上顎突出、または両顎突出)および「八重歯」(叢生)の治療についてお話しましょう。
「出っ歯」についてですが、「出っ歯」は上の歯が出ている場合と、上の歯と下の歯の両方が出ている場合があります。また、歯だけが出ている場合と、顎そのものが出ている場合もあります。それぞれについて治療は異なります。患者さんの年令によっても治療法は異なってきます。
 上の歯が出ている場合は噛み合せが深く、顎も出ていることが多いのですが(写真@A)、その場合には患者さんがまだ子供であれば、いきなり出ている前歯を内側に入れるようなことはあまりしません。まだ成長の力を治療に利用することができるからです。
 バイオネーターやヘッドギアーを使用して顎の位置を適正な関係に近づけます(写真BC)。バイオネーターは下の顎が後ろに退がっているのを前に移動させ下の顎の成長を促進することで、上の顎と下の顎の関係を改善させます。ヘッドギアーは主に上の顎が出ているのであって、下の顎はあまり後ろに退かれていない場合に用いられます。上の顎の成長を抑制することで相対的に上の顎と下の顎の関係を適正な関係に近づけます。その後、大人の歯に生え変わったところで、まだ、歯が出ているかどうか評価します。
 ここからは大人の治療と同じです。歯が出ている場合には、歯を抜く必要があるかどうかを検討します。前歯を後ろに移動する量が大きければ歯を抜きます。移動する量が小さければ抜かないで治療をします。このような治療は歯に直接装置をつけます。


 次に「八重歯」の治療ですが、歯の重なり具合や患者さんの年令によって治療の方法は異なります。まだ全部の歯が大人の歯に生え変わっていない場合には、顎の大きさの成長を促進させる治療をします。顎を拡大する方法はいろいろあります。その中のひとつに、自分で出し入れをするタイプのものがあります(解説参照)。軽度の「でこぼこ」の治療に使われます。
 この装置は先ほどの「出っ歯」の治療にも使うこともあります。顎の関係は適正で、歯だけが出ている場合です。顎の幅が狭いために前歯が押し出されてしまっているような場合です。この患者さんの場合には拡大させる装置を、主に夜寝ている間、上下とも装着し(解説参照)、前歯のみ歯に直接つける矯正装置(プラケット)で治療しています。患者さんにかかる負担が少ない治療です(写真DEFG)。成長の終わった大人については、「でこぼこ」の大きさによって歯を抜くか抜かないか、また、どの部位を拔くのかを決めます。「でこぼこ」のために奥歯を噛み合せても前歯が開いてしまう場合もあります。その場合も歯を抜いて治療することがあります(写真HIJK)。
 歯を抜いた後は、歯に直接つける矯正装置で治療をしていきます。歯を抜く場合でも抜いた跡は残りません。

 ここに紹介した治療はほんの一例にすぎません。その人その人の現状と希望するゴールにより様々な方法があります
 大きな「でこぼこ」や「出っ歯」を治すために、歯を拔くかわりに奥歯をもっと置くに移動させる場合もあります。
 直接つける矯正装置(プラケット)もセラミックなど目立たない装置もありますし、歯の後ろ側(舌側矯正)からつける場合もあります。
 装置の種類は色々ですが、基本的な考え方はわかっていただけたのではないでしょうか。あなたの症状にあった治療法もきっと見つかると思います。先生により治療法は異なってきます。どのようにしたいのかといった要望を具体的に先生に示すことが適切な治療を受ける鍵になると思います。

●用語解説●
◆バイオネーター
矯正装置の一種で、アゴの前後的な位置関係の改善や、幅の拡大などを行う。
◆ヘッドギア
上顎の成長をコントロールする矯正装置。口から出ている太い針金は上顎の奥の歯につけた装置につながっていて、バネで上顎そのものを後方へ引く。また、上顎にある奥歯が前に来るのを防ぐためにも使用する。

◆拡大装置
自分で装着可能な拡大装置。さまざまなタイプがあるが、このタイプは、バネの力によって顎を拡大させるもの。

 

砂盃 清院長

東北大学卒業後、東北大学口腔外科・歯科痲酔科に長く在籍したのち、歯周病・インプラント・歯周補綴・予防歯科に力を注いでいる。

砂盃亨子副院長

東北大学卒業後、昭和大学歯学部矯正学教室、国立小児病院歯科などの経歴を持ち、矯正と小児歯科には高い専門性を持っている。